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「El Sueño」でのインタビュー: 和訳

スペインのWebメディア「El Sueño」で受けたインタビューを翻訳しました。

原文URL:

https://www.prensil.org/elsueno/11/AMIBIQUE.html

 

〜以下、和訳〜

 

ーあなたの名前にはどういう意味が?

 

私の名前(Ami-Bique)の由来は、私のバイブルである金原ひとみさんの小説『AMEBIC』からです。発音の「əmíːbɪk」をフランス語に置き換えています。日本ではクールな印象を与えるためにフランス語が使われることがありますが、私もかっこつけたいと思ってやりました。大学時代、フランス文学を専攻していたので、フランス語の単語を辞書で調べることが容易だったこともあります。


ーあなたの日常生活はどんな感じですか? また、年齢はおいくつですか?


朝は、豆乳入りのコーヒーを飲みながら、ヨーグルトとバナナにハチミツを入れて食べています。昼食は、肉、米、野菜のセットメニューがほとんどです。夕食も昼食と同じような栄養バランスを保つように心がけています。また、週に3回ほどランニングをしています。寝るときは、ホットアイマスクをして体を休めるようにしています。
年齢については、最近はあまり公開していないのですが、このインタビュー時点(2022年10月)では30歳です。


ーあなたの音楽は、クラシックなモジュラーの電子音楽というよりも、White Houseやパンクロック、ハードコアに近いのでしょうか?


私は自分の音楽をブラックメタルと呼んでいます。ポストパンクやノイズなどのハードコアミュージックに近いものがあります。しかし、White Houseについてはあまり詳しくありません。クラシックな電子音楽というのがKraftwerkのような音楽を指すのであれば、私の音楽は表面的にはそれらとはかけ離れています。しかし、私は様々なジャンルの深層を解体・再構築しているので、Kraftwerkのような電子音楽の影響を受けているとも言えます。、私の音楽は今まで聴いてきた数多の音楽の子供(孫)であるとも言えるでしょう。


ーパフォーマンスに使う機材の中で、お気に入りのモジュールは何ですか? また、ペダルは使用していますか?


お気に入りのモジュールは「Snazzy FX Chaos Brother」です。このモジュールは、カオス理論に基づいたアルゴリズムを内蔵したLFOで、ニュートンにも計算できないタイプの狂気を音楽に付加するものです。また、Snazzy FXの全ユーロラックモジュールに共通することですが、フォトジェニックなデザインは気分を盛り上げてくれますね。Chaos Brotherは比較的古いので、それよりも新しいモジュールは何個かありますが、私にとってはSnazzy FXが一番の相棒です。他と比べて性能が劣っていようが、手放したくありません。これが愛ってやつなんでしょうね。
ペダルのことはよくわからないのですが、Moog Moogerfoogerは時々使っています。ただ、モジュラーシンセ以外の機材を増やすとライブ直前のセッティングに時間がかかってしまうので、自宅でしか使っていません。


ーノイズ音楽において、日本には著名な方々がたくさんいますね!今の日本のシーンをどう見ていますか? Borisの周りにはブラックドゥームメタルスタイルのバンドが多いですか?


演奏に限って言えば、有名なミュージシャンだけでなく、日本には素晴らしいノイズミュージシャンがたくさんいます。しかし、ノイズ・レジェンドの功績は演奏面だけにとどまりません。Merzbowや非常階段のような方々は、需要のない無人のマーケットから始まり、お客さんを作ってシーンを確立しています。この、0を1にしたということが、一番の功績だと思います。聖書の神が最初の光を創造したように。次のノイズミュージシャンがやるべきことは、まだ見ぬマーケットを作るためのアクションを起こし続けることだと思うんです。その行動こそが、レジェンドへの真のリスペクトとなるのではないでしょうか。
Borisについてはほとんど知らないので、これから勉強していきたいと思います。申し訳ありません。


ーあなたは普段、どんな音楽を聴きますか? 参考にする音楽はどんなものですか? また、ずっと好きなバンドやミュージシャンは何ですか?


主にソフトロック全般を聴いています。音楽で参考にしているのは、ポップス寄りのロック(B'z、hide、X JAPAN、L'Arc-en-Cielなど)が多いです。
私の一番好きなアーティストはB'zです。キャッチーなハードロック、ダンサブルなビート、レゲエなど、様々な音楽的要素を備えています。彼らの制作方法は、ブラックメタルとヒップホップなどをサラダボウルで混ぜたような、私のやり方と似ていますね。幼い頃からB'zをずっと聴いていたので、無意識のうちに彼らの魂に影響を受けていたのでしょう。
ブラックメタルのミュージシャンの中では、Ildjarnが一番好きです。彼のミニマルな狂気は、私にとってブラックメタルそのものです。


ー歌詞はどのようなことを歌っているのですか? シンガーとしてというより、楽器として声を使うことが多いのでしょうか?


自分自身の社会的な意見や人生観を歌詞の題材にすることが多いですね。最近のアルバム『Rock'n'Roll Amoeba』には、私の宗教観を歌った曲もあります(表題曲『Rock'n'Roll Amoeba』や『Dear Hangedman』)。歌詞をぼかすためにグロウル(いわゆるデスボイス)などの歌唱法を用いています。聞こえてくる言葉があまりに鮮明だと 、Twitterで激しく怒っている投稿を見たときのように、心や脳にダメージを与える可能性があるからです。曲を聴いてからブックレットを読んで、聴き取れなかった歌詞を読み取ってほしいのです。ワンクッションあるおかげで、言葉のエッジが柔らいで伝わるでしょう。私にとってグロウルは、歌詞を切実に伝えるための緩衝材なんです。
このボーカルは楽器としての価値もありますが、あくまでシンガーとして歌詞を伝えていくように使いたいと思っています。


ーあなたのショーはいつも熱狂的で素晴らしいです!どのようにパフォーマンスを組み立てているのですか?


ありがとうございます。演奏については展開をぼんやりと考えているのですが、ライブでの動きやボーカルについてはほとんどプランがありません。私のパフォーマンスは、その日・その時の気分を忠実に反映したものです。たいていの場合は楽しんでいるので、できる限り笑ったり踊ったりしています。逆に、ライブの直前に嫌なことがあったりすると、下を向いて不機嫌な顔でプレイすることもあります。演奏中の私の動作は、日常生活のときとほぼ同じです。子供の頃から手足の動作が周囲と違ったために、幾度となく馬鹿にされましたが、このおかしな体がステージでは唯一無二の強みになるので、感謝しています。


ー最新アルバム『Rock'n'Roll Amoeba』についてお聞かせください。


このアルバムのタイトルは、自分のことを指しています。最初の質問で話したように、私の名前の由来は「Amoebic」、英語で「アメーバのような」という意味です。そして、私は広義の意味でロックンロールを行っているつもりなので、自分のことを「ロックンロールをするアメーバ」だと思っています。
このアルバムは、今までで最も抽象的なサウンドです。これはわざとやりました。音楽における「中毒」という概念に対抗するアルバムを作りたかったんです。薬物中毒やアルコール中毒は問題視されるのに、音楽の中毒性は問題視されず、むしろ賛美される風潮に疑問を感じていたからです。中毒性をなくすために、メロディーが頭に残らないよう、なるべくぼかした音につぶしました。『Rock'n'Roll Amoeba』は坂本龍一さんのレーベルが運営する「commmonsmart」に委託されています。このような分かりづらいシンセ・ブラックメタルのアルバムが日本の名のあるレーベルから発売できたことは、非常に興味深い試みであると確信しています。


ーあなたはレーベル「Xeno-Kent Station」の創設者ですが、そのことについて教えてください。


現在、Xeno-Kent Stationでは、OpenSeaにてNFTの音源を販売しています。これらはすべて即興演奏の音源です。即興とNFTは「一点物」という共通の価値があり、親和性が高いと考えています。Maniac(ex- Mayhem)も私のレーベルからリリースしています。先述の「0を1にする」ことに挑戦するために、NFTを始めました。NFTは、CDやBandcampで販売されている音楽とは根本的に商品価値が違うという理解をしています。その価値は、NFTの各利用者が時間をかけて作り上げていくものです。即興のNFT音楽は、現時点では需要がないかもしれません。しかし、例えば、今では誰もが料理に使うトウガラシは、ヨーロッパの商人が売り始めた頃は需要がありませんでしたが、長年の努力で世界的な調味料になりました。このように、長期的な視点で新しい音楽の基盤をつくっていきたいと考えています。私のトライは失敗するかもしれませんが、チャレンジしないよりは遥かに価値があります。こういう姿勢もまた、ロックンロールではないでしょうか。


ースペインを訪れたことはありますか?


スペインにはまだ行ったことがないんです。ちょうど今、Rosalíaの「Despechá」を聴いていたところでした(笑)。スペインや中南米は、伝統的な音楽がプリミティブに残っていて、とても興味深い地域だと思います。
そういえば、バレンシアのデジタルアートの祭典「The Wrong Biennale」で、私が地面に頭をつけて謝りながら(日本では「土下座」と呼ばれています)シンセサイザーを演奏する映像が展示されたことがありました。アートって何でしょうね? 昔はよく考えていましたが、忘れました。意識していないからこそ、Ami-Biqueでいられるのかもしれません。